胡蝶蘭の花を楽しんだのも束の間、根に異常が起きて弱ってしまったという事態に陥っている方はいるのではないでしょうか。見た目はきれいに咲いていたとしても、根が傷んでいると花や株全体が弱り、やがて枯れてしまうことにつながります。
本記事では、胡蝶蘭の根に起こりやすい病気の特徴と対処法、日ごろから予防できる対策などを詳しく紹介します。大切な胡蝶蘭を長く元気に育てるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
目次
胡蝶蘭の根が病気になる主な原因
胡蝶蘭の根が病気になる背景には、栽培環境の不適切さが大きく関わっています。特に多いのが水やりの失敗で、乾く前に繰り返し与えると根が常に湿った状態になり、酸素不足から腐敗やカビの発生につながります。
また、植え込み材が古くなると通気性や排水性が悪化し、菌が繁殖しやすい環境になります。さらに湿度が高すぎる場所や風通しの悪い環境では、病原菌や細菌が根に侵入しやすくなります。
胡蝶蘭の病気の発生を防ぐためには、まず「なぜ根が傷んでしまうのか」という部分を理解しておくことが重要です。
胡蝶蘭の根に起こりやすい病気
胡蝶蘭の根に起こりやすい病気として、以下の3種類が挙げられます。
- 根腐れ
- リゾクトニア菌による病気
- フザリウム菌による病気
胡蝶蘭の根は環境の影響を受けやすく、さまざまな病気にかかることがあります。
ここでは、それぞれの病気の特徴と発生してしまった際の主な対処法を具体的に見ていきましょう。
根腐れ
胡蝶蘭の根で最も多く見られるトラブルが根腐れです。主な症状としては、根が黒く変色してぶよぶよにやわらかくなり、株全体が弱っていくのが特徴です。
根が機能しなくなるため、葉がしなびて元気を失い、下葉が黄色くなって落ちることもあります。原因の多くは水の与えすぎであり、鉢内に水がたまり酸素が不足することで根が窒息して腐敗が進んでしまいます。
それだけでなく、排水性の悪い鉢や古くなった植え込み材を使っている場合にも発生しやすい病気です。
主な対処法
根腐れが起きた場合は、まず鉢から株を取り出し、腐った根を清潔なハサミで切り落とします。その後、残った健康な根を日陰で数日乾燥させ、しっかり水分を抜いてから新しい鉢と植え込み材に植え替えます。
植え替え直後は水を与えすぎず、葉への霧吹きで水分補給を行うと根の負担を軽減できます。寒い時期は株へのダメージが大きいため、春や秋など比較的気温が安定している時期に作業するのがおすすめです。
リゾクトニア菌による病気
リゾクトニア菌はカビの一種で、根腐れとよく似た症状を引き起こします。特徴的なのは、鉢の中や用土に蜘蛛の巣のような白い糸が見られることと、キノコのような独特の匂いがすることです。
株に十分水を与えているのにしおれてしまい、葉が黄色に変わる前に落ちてしまったらこの病気を疑ってください。
主な対処法
リゾクトニア菌に感染した場合も、植え替えが有効な対処方法です。腐敗した根を清潔なハサミでしっかり切り取り、残った根は2~3日間吊るすようにして乾燥させます。乾燥させることで菌の活動を抑え、再発のリスクを下げる効果があります。
その後、新しい鉢と新鮮な植え込み材を使って植え直してください。植え替え後は水やりを控えめにし、環境を清潔に保つことで回復していきます。
フザリウム菌による病気
フザリウム菌は土壌に生息するカビの一種で、胡蝶蘭が弱っているときに根から侵入し病気を引き起こします。症状としては、茎が黒っぽく変色したり葉が黄色くなって落ちたりといったことが挙げられます。
この病気は発見が遅れることが多く、対応が遅れてしまうと株を救えなくなる危険性があるので注意が必要です。
主な対処法
フザリウム菌が疑われる場合は、感染した部分をすぐに切除し、植え替えを行います。植え替え時には「トリフミン」や「ロブラール」といった薬剤を使用して殺菌処理を行うと効果的です。
健康な部分を残せば株が持ち直す可能性がありますが、中心部の葉まで侵されている場合は回復が難しくなってしまいます。そのため、少しでも早く異常に気づいて処置をすることが重要です。
胡蝶蘭の根の病気を防ぐ予防策
胡蝶蘭の根を病気から守るための予防策として、以下の3点が挙げられます。
- 水やりは乾いてから与える
- 受け皿の水は残さない
- 通気性・排水性の良い鉢や用土を使う
最後に、胡蝶蘭を健康に保つための基本的な予防策を紹介するので、胡蝶蘭を育てる際に役立ててください。
水やりは乾いてから与える
胡蝶蘭の根は常に湿った状態を嫌うため、水やりのタイミングを誤ると病気の大きな原因になります。特に初心者に多い失敗は「心配でつい頻繁に与えてしまう」ことです。
しかし、これは鉢の中を酸欠状態にし、根が呼吸できなくなって腐敗やカビの繁殖を招く可能性があるため、注意しなければなりません。
正しい方法は、鉢や根がしっかり乾いてからたっぷり与えることです。逆に少しずつ頻繁に与えるのは良くないので、一度に鉢底から水がしっかり流れ出るほど与えたあとは完全に乾くまで待つようにしましょう。
受け皿の水は残さない
胡蝶蘭を鉢で育てるとき、見落としがちなのが受け皿にたまった水です。この水をそのまま放置してしまうと、鉢底から根に常に湿気が伝わって根腐れやカビの繁殖につながります。
特に夏場は気温が高いため、受け皿の水がぬるま湯のようになり、雑菌が一気に増えてしまう環境をつくり出します。
水やり後は数分置いて余分な水が完全に流れ切るのを待ち、そのあと必ず捨てることが大切です。ほんの小さな手間ですが、受け皿を常に乾いた状態にしておけば病原菌や害虫が寄りつきにくくなり、根の健康を守ることができます。
通気性・排水性の良い鉢や用土を使う
胡蝶蘭は、通気性や排水性を意識することも重要です。素焼き鉢やスリット鉢は空気や水分が循環しやすいため、胡蝶蘭の栽培に適しています。
植え込み材はミズゴケやバークを使用するのが一般的ですが、劣化したミズゴケは水はけが悪くなり、過湿状態をつくって病気の温床になりやすいので注意が必要です。
2~3年に一度は植え替えを行い、新鮮で清潔な用土に替えることで通気性を維持し、根の健康を長く保つことができます。
まとめ
胡蝶蘭の根は健康状態を映し出す大切な部分であり、根が病気になると株全体が弱ってしまいます。特に根腐れは最も多いトラブルで、水やりのしすぎや排水不良が原因となりやすい病気です。
その他にも、リゾクトニア菌やフザリウム菌といったカビが根に侵入すると、見た目は似ていても進行や特徴が異なる病気を引き起こします。いずれの場合も、早めに異常に気づき、腐った部分を取り除いて植え替えることが回復への第一歩です。
根は普段目に見えにくい部分ですが、定期的にチェックしておくことで病気の早期発見につながります。大切な胡蝶蘭を長く元気に育てるために、ぜひ根の管理にも意識を向けてみてください。