お祝いのシーンで贈られることの多い胡蝶蘭。暖かい時期であれば室外で育てることができるので、お世話がしやすいです。しかし、寒さに非常に弱い植物であるため、日本の冬を過ごすには、保温をするなどの工夫が必要になるでしょう。この記事では、胡蝶蘭の保温方法などを詳しく解説していきます。
目次
胡蝶蘭は寒さが苦手!
胡蝶蘭は非常に寒さが苦手な植物です。胡蝶蘭の適正温度は18℃〜25℃とされているため、18℃以下の環境で育てると、胡蝶蘭が上手に育たなかったり、最悪の場合枯れてしまうことが予想されます。
そもそもなぜ胡蝶蘭は寒さが苦手なのでしょうか。ここでは、胡蝶蘭の原産地についてや、生態についてを詳しく解説していきます。
胡蝶蘭の原産地
胡蝶蘭の原産地は、インドネシアやマレーシア、フィリピンなど主に東南アジアの熱帯地域を中心としています。
この地域の気候は、日差しにも恵まれているため非常に暖かく、年間を通しても平均19℃を超えてくるそうです。つまり、胡蝶蘭の原産地域は非常に暖かい環境であることがわかります。
一方で、日本は暖かい時期と寒い時期を繰り返す地域であるため、胡蝶蘭が育つ環境にはあまりふさわしくありません。地域にもよりますが、日本で上手に胡蝶蘭を育てていくには、寒さ対策が必須となってくるでしょう。
着生植物とは
着生植物とは、植物の幹や岩に根を張り固着する植物を指します。
植物といえば、土の中に根を張る姿を想像することが多いかと思いますが、胡蝶蘭のように独自の方法で生息している植物は意外に多いです。
- コケ類
- ラン科植物
- サトイモ科
- シダ科
着生植物の中でも、上記の分類が代表的だとされており、胡蝶蘭はラン科植物の分類になります。
着生植物の多くは、胡蝶蘭と同じく熱帯地域を原産としているため、寒さに弱く日本で育てるには何かしらの工夫が必要となってくるでしょう。
胡蝶蘭の冬越しは保温が重要
寒さに弱い胡蝶蘭ですが、工夫をすれば日本の冬も安心して越す事ができます。
冬越しに大切なのは「保温」です。
ここでは、胡蝶蘭を冬越しさせるのにふさわしい保温方法についていくつかご紹介します。
エアコン
家にあるエアコンで簡単にできるこの保温の方法は、特に準備をするものもないので、急な寒さにも対応できます。
寒くなってきたら、胡蝶蘭が一番育ちやすい18℃〜25℃に室内温度を保って胡蝶蘭を管理しましょう。
ただし、エアコンは非常に乾燥するため、こまめに鉢の乾きを気にすることが必須です。また、窓際は外の気温と変わらないことや、エアコンの風を直接当ててしまうと葉を傷つけてしまうなどのトラブルが発生しやすいので、置き場所には注意をしましょう。
段ボール・毛布
室内で管理をしていても、外出時や就寝時などはエアコンを切る人も多いかと思います。
エアコンを切った室内でそのまま管理をすると、18℃を下回ってしまうことが予想されるため、エアコンを切る場合は、ダンボールや毛布で植木鉢の部分を覆ってあげると良いでしょう。鉢を覆ってあげることで、胡蝶蘭自体の温度が下がるのを防ぎます。
ビニール袋
ビニール袋もダンボールや毛布と同様に、エアコンを切った際に室内で使用できる防寒グッズです。
胡蝶蘭をすべて覆うことができるビニールを用意して、胡蝶蘭をすべて覆ってあげましょう。このときに、事前に葉水をしてあげると、過度な乾燥を防ぐことができます。
衣装ケース
衣装ケースは一見保温グッズとはあまり縁のないものと感じる人も多いと思いますが、サイズが合えば簡単に保温ができます。
基本的に衣装ケースで保温できるのは、小さな胡蝶蘭です。衣装ケースにいれて蓋を閉めれば保温することができるでしょう。ただし、気温が低すぎるとそれだけでは寒さをしのげない場合があります。その場合は、衣装ケースの上から毛布などを掛けておくとよいでしょう。
温室
室内に胡蝶蘭を置く場所が確保できない……という場合は、外で温室栽培をするのもおすすめです。
温室栽培と聞くと、大きなビニールハウスなどを想像する人も多いと思いますが、園芸店などに自宅用の小さな温室が販売されているので、そういったものを使用してみるとよいでしょう。もちろん外だけではなく室内でも温室管理が可能です。
胡蝶蘭の保温のための「温室」は手作りできる?
保温のための温室は、専用のものを購入するとなるとお金もかかるので大変ですよね。
胡蝶蘭を管理するための温室は、自分で手作りすることも可能なので、余裕のある人はぜひチャレンジしてみてください。
揃えるものは以下の通りです。
- 発泡スチロール
- クリアファイル
- テープ
発泡スチロールは、蓋を外した状態で縦にして使用します。本来蓋があった場所にはビニールを貼り付けます。
上に来た面を切り取り、クリアファイルを蓋の代わりに使用すると、中をしっかり観察することができるでしょう。これで温室が完成します。
とはいっても、簡易的な温室なので、加温・加湿の装備は整っていません。
加温は、日中に窓際に置いて太陽に当てることでできるようになります。加湿は胡蝶蘭自体から発生する水蒸気で行うので、簡単に胡蝶蘭の温室を作ることができます。
保温のためには置き場所にも注意
保温を成功させるためには、置き場所に注意する必要があります。
気をつけたい置き場所は以下の通りです。
- 窓際
- 玄関
- エアコンの風が直接届く場所
先程も少し述べましたが、窓際はとても寒くなるため、外の気温とあまり変わらない可能性もあります。そのため、あまり窓際に置きすぎると冬越しができず、寒さによって胡蝶蘭の根を傷つけてしまう可能性があるのです。玄関も同様で、寒いだけではなく出入りが激しい場所でもあるので、冷たい外気にさらされやすいです。
また、エアコンの風やカーテンが直接当たるような場所は、胡蝶蘭の葉を傷つけたり花を落としてしまう可能性があるので注意が必要になります。さらに、エアコンの風は乾燥にもつながるので、乾燥が気になる場合は、直接葉っぱに霧吹きで水をあげる「葉水」を行うとよいでしょう。
保温以外にも重要なことは?
保温以外にも胡蝶蘭を上手に冬越しさせるためには、以下の2点に注意するとよいです。
- 温度管理
- 水やり管理
それぞれを詳しく解説していきます。
湿度管理
湿度管理は胡蝶蘭を育てる上で非常に大切なポイントです。
熱帯地域を原産とする胡蝶蘭は、乾燥を非常に嫌うため、最低でも40%程度の湿度で育てるのが理想的。特に冬は非常に乾燥するため、こまめに湿度に気をつける必要があるでしょう。といっても、胡蝶蘭のすぐ隣に加湿器をつけておくのも、花びらにシミがつく「花シミ」を引き起こすのであまり好ましくありません。
加湿をする場合は、部屋全体を加湿器を使用して加湿するか、葉水などでこまめに水を上げるとよいでしょう。
水やり管理
胡蝶蘭は冬の時期は冬眠状態に入るため、夏の時期ほど水を必要としません。また、7℃以下の環境で水やりを行うと、根が凍ってしまい枯れてしまうことも考えられます。
冬の時期の水やりは、水苔やバークなどの植木剤がしっかり乾いたのを確認し、さらにそこから2〜3日後にコップ1杯のお水をあげるのが好ましいです。
また、冬の水はとても冷たいので、一度常温に戻してから水やりを行いましょう。
まとめ
胡蝶蘭は日本の冬にはあまり適していない植物ですが、工夫をすることで手軽に冬越しが可能になります。
室内では少し狭いと感じる場合は、屋外でも温室や毛布など身近なものを使用するだけで、保温が可能なので、ぜひ試してみてください。また、一度失敗してしまっても胡蝶蘭の生命力は非常に強いので、くじけずお世話をしてみることをおすすめします。