胡蝶蘭は美しくつやつやとした肉厚の葉と、等間隔に整然と並んだ花の絢爛さが魅力的ですよね。
しかし、せっかく丹精込めて育てた胡蝶蘭も、病気になってしまえば美しさも今までの努力も水の泡。できることなら病気になっても助けてあげたいもの。
胡蝶蘭を育てる上で考えられる病気と、その予防・治療に効果的な殺菌剤をまとめてみました。
目次
胡蝶蘭が軟腐病にかかった時の殺菌剤
軟腐病とは、細菌、もしくは真菌(カビ類)による病気です。
細菌によるものは独特の腐臭に加え、葉先が黄色く水膨れのように膨らんで腐っていきます。葉が脆くなり、手で触れると組織が破れて中の水がでてきます。見た目の悪さもありますが、放置すれば温室全部の胡蝶蘭が全滅することもある怖い病気です。
細菌はカビと違い、自力で侵入することができません。傷口や気孔から細胞内に入り破壊を始めます。
軟腐細菌は表皮を分解し、増殖を繰り返しながら葉の表面に広がってゆきます。葉元に達するとすぐに幹まで広がってしまうのです。
進行が早く、すぐに株が枯れてしまうので、他の株に細菌が移る前に処分することが重要です。
乾燥すると埃のように風に乗って飛び散り、他の株に被害を及ぼします。ホースで葉に水を飛ばすと、水に乗り拡散し感染します。
また、カビによるものは独特の悪臭がありません。患部も黒い斑点ができ、進行が遅いです。
ストマイ水和剤
引用元:日本農薬株式会社
ストマイ水和剤は細菌による病気に対してすぐれた効果を発揮する抗生物質殺菌剤です。軟腐病にもおすすめできます。
抗生物質のストレプトマイシンを主成分とする殺菌剤で、軟腐病に限らず、細菌によって引き起こされる各種の病害にすぐれた防除効果をあらわします。
使い方
できるだけ早く、患部を多目(健全に見える部分も5mm~1cmほど余分に)切り取ります。
切り口とその周辺に、ゆるめのペースト状に濃く溶いた薬剤を筆で塗布しましょう。
切り取った患部が他の葉や株に付着した場合は、放置せずに薬剤を塗布しておきます。
軟腐病は感染力が強く、進行の早い病気です。そのため気付いたら早めに手を打ちましょう。
ダイセン系殺菌剤
引用元:モノタロウ
ダイセン系殺菌剤は細菌・カビ類によって引き起こされる病気に広く効果を発揮します。
軟腐病に酷似した症状だが特有の悪臭がない場合、真菌(かび)性に起因する可能性が高いです。真菌性のものにはMダイファーやビスダイセンなどが有効です。殺菌、殺虫効果も高いですが希釈率をしっかり確認して使用しましょう。
使い方
できるだけ早く侵された部分を切除します。(周辺の健全に見える部分も5mm~1cm多目に切除する)切り口とその周辺に希釈した薬液を付けます。
もし切除した患部が他の葉や株に付着した場合は、薬液を付けるか熱消毒しましょう。土に関しても同様です。
胡蝶蘭に斑点やカビが発生した時の殺菌剤
胡蝶蘭の葉に黒色の斑点が発生する、カビが原因の病気です。初期は淡褐色の小さな斑点が出ます。
放っておくと徐々に大きくなっていき、色が茶褐色や黒褐色へ濃くなってきます。
原因はカビ胞子の飛散によるものです。
強い日光による葉焼けや、凍傷で葉の組織が弱ると、ウイルスやカビに弱くなることで引き起こされます。枯れた花を放置すると感染する場合もあります。
ベンレート水和剤
引用元:amazon
ベンレート水和剤は、糸状菌に有効な薬剤です。
浸透移行作用により病原菌の侵入を防ぐ予防効果と、侵入した病原菌を退治する治療効果を兼ね備え、病原菌の細胞分裂を阻害して防除します。症状が出始めた初期に対処すると高い効果を発揮します。
使い方
何枚かの葉にすでに広がってしまった場合は水で薄めて散布します。まだ部分的な進行にとどまっている場合には筆などで塗布しましょう。下葉に症状が出た場合には切除します。
STダコニール1000
引用元:住友化学園芸
STダコニール1000は、かび類(糸状菌)によって起こり、特にもち病や炭そ病、斑点病など葉が変色するタイプの広範囲の病気に効果がある総合殺菌剤です。予防効果が高く、日頃から使用することで効果を発揮します。
耐光性、耐雨性に優れ、病気から植物を守る残効性があります。散布後の葉の汚れも少なく、観賞性を損なうことなく治療できます。
使い方
使用直前に容器をよく振ります。石灰硫黄合剤との混用は避けて使用します。
水で薄めて患部に散布します。このとき、花弁に薬液が付着すると漂白・退色などによる斑点を生じる場合があるので、すでに開花した株を治療する際には散布ではなく筆などで塗布します。
胡蝶蘭が葉焼けしてしまった時の殺菌剤
胡蝶蘭は、強い日光にさらされると葉が傷んで変色します。茶色や黄色、白っぽく乾いた感じに変色した場合には直射日光に長時間当てたことが原因と考えられます。
根に近い低い位置にある葉が黄色や茶色に変色し、葉が薄くしわしわになってくる場合は養分回収のために起こる自然現象であり、特に問題はありません。
エムダイファー水和剤
引用元:住友化学園芸
胡蝶蘭は、葉焼けすると葉の組織が弱くなり、そこから病原菌が入ることも少なくありません。エムダイファー水和材は細菌・カビ類の広範囲の病気の予防に効果が期待できます。
使い方
エムダイファー水和剤は、水に薄めて散布します。葉焼けした部分を切り取った場合、切り取り口にも散布しましょう。
胡蝶蘭にカイガラムシが着生した時の殺虫剤
カイガラムシは葉や花に付着し、吸汁して葉や花を傷つけます。黒い小さな斑点のようで、著しく見た目を損ないます。
カイガラムシを放置すると、フンに菌が繁殖しそこから葉が腐るなどの被害をもたらします。
一度大量発生してしまうと完全駆除が難しく、気づいたときにすぐに対処しなければなりません。
ベニカDスプレー
引用元:テクノ株式会社
ベニカDスプレーは、スプレー状の薬剤です。カイガラムシだけでなく、アブラムシ、ケムシにも殺虫効果があります。
使い方
カイガラムシのいる葉に向かって原液で散布します。
初期の段階で発見できた場合は、爪楊枝や綿棒のようなもので目に見える範囲だけでも掻き落とすと良いでしょう。
白い綿状のフワフワしたものはコナカイガラムシ(ワタカイガラムシ)という種類で、こちらはガーゼやティッシュで拭き取ったあと、ベニカDスプレーを散布しましょう。
スプラサイド乳剤
スプラサイド乳剤は、「カイガラムシの特効薬」と呼ばれる、カイガラムシ虫害の定番薬剤です。即効性が高く、初期の治療に適しています。
使い方
発生初期に希釈して散布します。繁殖してからだと効果が薄くなるので、早めに対処することが大切です。
胡蝶蘭にダニが涌いた時の殺虫剤
胡蝶蘭に付着するダニは大きく分けてハダニ、コナダニです。
ハダニは主に梅雨明けから夏にかけて、気温が高く乾燥した時期に発生しやすい害虫です。胡蝶蘭の適温範囲内であれば一年中発生します。
胡蝶蘭の葉の裏側がべたつき、白斑が見られた際に、その白斑のくぼみに針の先端ほどの小さな赤いダニがハダニです。
コナダニはハダニとは対照的に湿度が高い日陰に発生します。稀に花粉や柱頭に寄生することがあります。並んだ胡蝶蘭の花の内、1輪だけが突然萎れた場合には、このコナダニが原因である可能性が高いです。
肉眼で発見することは難しいので発生に気づけない場合も多く、注意が必要です。
アクテリック乳剤
引用元:モノタロウ
接触およびガス効果により速効的に効果を示す有機りん殺虫剤です。広範囲の害虫に対して効果があります。カイガラムシにも高い殺虫効果を発揮します。
使い方
希釈して散布します。即効性が高いので発生したあとにも効果があります。
胡蝶蘭の病気や害虫は早期発見が重要!
胡蝶蘭は葉が肉厚で水分も多いです。そのため、病気の進行が早い上に枯れるのにも時間がかかるため、他の株に病気を移してしまうことも珍しくありません。
普段からよく観察し、調子の悪い株にいち早く気づき、病気や虫害を早期発見することが大切です。
まとめ
胡蝶蘭は豪華で美しく、健康に育てれば非常に達成感が味わえる植物です。手をかけて育てれば、きちんと植物は応えてくれます。病気から胡蝶蘭をまもって、素敵に育ててあげたいものですね。